桐は古来から縁起の良い木、幸福をもたらす木として尊ばれています。世界にも桐は皇室に縁の深い木として尊重されてきました。中国では、仏教によくでてくる鳳凰がとまる木として縁起のよいことで有名です。さらに英語で桐のことを「Paulownia(ポローニア)」と言いますが、これはオランダの女王だったアンナパウローニを記念したものだと言われています。

 日本でも桐の紋は、古くから家紋の最高使用順位の第1位として天皇家で使用されてきました。菊と同様に朝廷の木でありました。 後醍醐天皇が足利尊氏に桐の紋を送った話は有名です。 豊臣秀吉の紋、太閤桐もよく知られています。このような文化が桐の高級感を創り、現在でも日本政府の使用するものや皇室関係には桐が使用されるのです。 そして桐は我々の憧れになっているのです。

 桐のルーツは中国から始まります。 古くから中国では、桐は木肌が空気を吸い込み、音響を良くする性質を持っていることから、琵琶や琴などの楽器の材料として使われてきました。 この文化が日本に入ってきたのは、奈良時代から平安時代にかけてのことです。 日本人は桐を単なる楽器としてだけでなく家具にも利用したのです。 日本人は日本の高温多湿の気候風土とこの吸湿性・通気性のある桐を結びつけ着物や衣類の収納箱を作りました。 これが、「桐衣裳箱(ながもち)」の始まりです。

 防湿、防虫という性質の他に、軽くて耐火性のある桐の特徴は大変評価され、大火の多かった江戸時代には桐タンスも多く作られるようになりました。 このように、昔からきりは大切なものを保存、収納するものとしてたくさんの人々の間に浸透して来ました。

桐は成長の早い木としても有名です。昔から女の子が生まれると桐の苗を庭先に植え、20年後にお嫁にゆく時にその木を切って嫁入りの桐箪笥を作るという風習まで生まれたほどです。

意外と知られていない桐の歴史をたどってみました。